JICA BLUE Academy 3期 実施レポート:22名のJICA海外協力隊経験者が「救いたい人」のために覚悟を深めた3ヶ月

2026.06.02|お知らせ レポート

JICA海外協力隊起業支援プロジェクト「JICA BLUE」(以下、BLUE)は、1期・2期に続き、2026年2月14日から5月2日までの約3ヶ月間、社会起業家育成伴走プログラム「JICA BLUE Academy」の3期を実施しました。

本レポートでは、22名のJICA海外協力隊経験者(以下、OV)が、派遣先や帰国後に培った経験と強い想いを「社会を変えることができるビジネスプラン」へと磨き上げていった様子と、プログラムを通じて得られた成果について報告します。

1. 1期・2期そして3期の挑戦へ

JICA BLUE Academyは、JICA海外協力隊経験者が途上国での活動を通じて培ったアントレプレナーシップと現地での知見や経験を、社会起業という形で社会に還元することを支援するプログラムです。

参加者は約3ヶ月間にわたり、運営事務局である株式会社ボーダレス・ジャパンのソーシャルビジネス立ち上げメソッドである社会課題を深掘るためのフレームワークとビジネスモデルを検討するためのフレームワークの2種類を活用しながら、解決したい社会課題に対する具体的なビジネスプランを作り上げていきます。

前期:ソーシャルコンセプト(SC)と後期:ビジネスコンセプト(BC)の流れをもとに、受講生がそれぞれの課題に集中して取り組みました。

3期の大きな特徴は、BLUEのコミュニティ内で、OVが次の挑戦者を支える好循環が生まれ始めたことです。今期からは、自身もOVであり、起業経験を持つ株式会社NIJINの星野達郎氏が新たにメンターとして参加してBLUEコミュニティのつながりと成長の輪がさらに広がっています。

2. 志を共にする22名の仲間たち

今期も、仕事や日常生活と両立しながら社会課題の解決に挑む22名のOVが集まりました。

参加者の派遣国はルワンダ、ネパール、ベナン、ヨルダン、ソロモン諸島など多岐にわたります。また、国外の社会課題に取り組むメンバーだけでなく、日本国内における不登校や社会的孤立、スポーツ機会の格差といった身近な社会課題に挑むメンバーも含まれます。全員がそれぞれの解決したい社会課題に対して「救いたい人を具体的に語れる」強い当事者意識を持ち、多様な経験や価値観を持つOVならではの仲間たちが集い、互いに刺激を受けながら学びあう、充実した3ヶ月間となりました。

3. 前期の歩み:思い込みから脱却し、「本質的な課題」に迫る

2月14日、東京・竹橋でのキックオフからプログラムが始動。受講生は、週1回のオンライン講義と各自で行うヒアリングを通じて、解決したい社会課題への理解を深め、その背景や構造を徹底的に掘り下げる期間を過ごしました。

この期間の密度の高いインプットと内省の日々を側面から支えたのが、3人1組の「バディミーティング」です。各地に散らばる同期たちが定期的にオンラインで集まり、日々の悩みや進捗を共有し合うことで、孤独になりがちなプランニングの期間において、互いの背中を押し励まし合う大きな支えとなりました。

また、「メンターブラッシュアップ会」では、受講生2-3名に対し実践経験に富んだメンター2名の計5名程度でグループ分けを行い、一人ずつフィードバックを受ける時間を持つことができました。

今期は、国内外の第一線で社会課題の解決や地域創生、事業開発に取り組む総勢19名の起業家・専門家がメンターとして結集しました。

■ 3期に伴走したメンター陣(五十音順)

青山明弘氏(ピープルポート株式会社)/ 伊藤綾氏(きら星株式会社)/ 榎本佳代氏(エール株式会社)/ 大塚智子氏(防災士・心理士)/ 甲田恵子氏(株式会社AsMama)/ 河内将弘氏(株式会社ボーダレス・ジャパン)/ 佐伯香那氏(株式会社ボーダレス・ジャパン)/ 鈴木雅剛氏(株式会社ボーダレス・ジャパン)/ 辻田寛明氏(ワオフル株式会社)/ 寺尾忍氏(株式会社テラオホールディングス)/ 中川雅也氏(株式会社中川)/ 原口瑛子氏(ボーダレス・ブルキナファソ株式会社)/ 半澤節氏(ボーダレスアカデミー)/ 星野達郎氏(株式会社NIJIN)/ 三原菜央氏(株式会社スマイルバトン)/ 山口豪志氏(株式会社54)/ 山田拓氏(株式会社美ら地球)/ 吉田照喜氏(ポストアンドポスト株式会社)/ 李成一氏(ボーダレスハウス株式会社)

メンター陣からの鋭く本質的な問いやフィードバックを受け、受講生は自分の思い込みや主観から脱却し、課題の本質を構造で捉える確かな土台を築き上げていきました。

4. 中間合宿での気づき:1期・2期修了生からのフィードバック

3月21日に開催された「中間合宿」では、JICA BLUEのコミュニティならではのつながりと強みが発揮されました。社会起業を目指して実践の現場に立つ1期・2期の修了生9名が、3期生の背中を押す心強いフィードバック担当として参加しました。

「本当に救いたいのはどんな現状にいるどんな人か?」

「その対策で、本当に目の前の人は救えるのか?」

先を行く実践者だからこそ見える視点での温かくもクリティカルな問いかけに、3期生は深く内省し、わずか1時間の個人ワークの間にプランを修正して再発表を行いました。

午後には、これまで整理・検討してきたSCをもとに、BCを作成するための実践的な講義を実施。社会課題への思いを事業として形にしていくための視点や考え方を学びました。この「中間合宿」を機に、受講生は社会課題の理解をさらに深めるとともに、事業プランの具体化に向けた検討を一段加速させていきました。

5. 後期の取り組み:現役起業家との対話を通じて深まる事業の具体化

後期は、前期で作成したSCについて試行錯誤を繰り返しながら、BCの構築に取り組む期間です。受講生は、だれにどのような価値を届けるのかを改めて見つめなおしながら、事業アイデアを絞り込み、マネタイズの仕組みや収支計画、サービス・プロダクトの具体的な形について検討を重ねました。

通期での個別伴走:現役起業家とのコーチMTG 

プログラム期間を通じて受講生のプランの幅を広げ、ビジネスとしての具体性をグッと加速させたのが、メンターによる「コーチMTG(個別面談)」です。

コーチMTGでは、事業プランに対する助言だけでなく、社会起業や事業開発の第一線で活躍するメンターとの対話を通じて、受講生自身のマインドに大きな変化が生まれました。

抽象的なゴール設定やビジネスコンセプトの組み立てに悩んでいた受講生が、メンターから「主観的な仮説ではなく、ターゲットや市場のリアルな声を直接ヒアリングしてみよう」と背中を押されたことで、顧客インサイトに深く迫る、事業家としての大切な視点を改めて思い出すことができ、また、誰に価値を届けるべきか迷子になっていたメンバーも、対話を通じて自身の原点や情熱に立ち返り、「誰をど真ん中に据えて事業を行うか」という覚悟を固めました。

後期中盤の視点を変えたインプット:コミュニケーションデザイン講座

スタートピッチ(最終発表会)に向けて事業プランの磨き込みが進む中、終盤には「伝える力」を高めるためのコミュニケーションデザイン講座を開催しました。

講師としてお迎えしたのは、株式会社電通のアートディレクターである榊 良祐氏です。受講生は、社会課題の解決につながるサービスやプロダクトを、どのような言葉や表現で社会に届けていくべきかについて学びました。

インプットだけではなく、受講生が考えたサービス/プロダクトのキャッチコピーなどをその場で丁寧にフィードバック・ブラッシュアップしていただく双方向のワーク形式で行われました。プロの視点が加わることで、ビジネスモデルに縛られて狭くなっていた思考の枠組みが大きく広がるなど、受講生にとって原点に立ち返る体験となりました。

一方で、事業の価値を一言で言い表すことの難しさに直面し、「まだビジネスコンセプトの解像度が甘い」と気づかされたメンバーも少なくありません。この講義をきっかけに、今のプランをいま一度深く再考し、確固たるものへ仕上げようと気持ちを新たに引き締める、非常に密度の濃い時間となりました。

講座終了後には、受講生同士がコミュニケーションツール上で今後のアクションを宣言。それぞれの進捗や挑戦を共有しながら、「仲間も頑張っているから自分も前進できる」と互いに刺激を受け合い、横のつながりをさらに深めていきました。こうした仲間との支え合いもまた、プログラムを前向きに進める大きな原動力となっています。

6. スタートピッチ(最終発表会):ここからが本当のスタートライン

5月2日、約3ヶ月間の集大成として、スタートピッチ(最終発表会)が現地(東京・竹橋)とオンラインのハイブリッド形式で開催されました。16名のメンターと、多くのJICA BLUE Academy修了生が見守る緊張感の中、受講生による熱い想いや、これから実現していく事業案を発表するスタートピッチが行われました。

発表後、メンターからは「プログラム修了はゴールではなく、ここからが実際の起業へのスタート」という激励とともに、次のステップに進むからこその具体的なアドバイスが寄せられました。

<スタートピッチ参加者の声>

「このプログラムを通じて、『この事業を本気で社会に広げていく覚悟が自分にあるのか』という問いに向き合い続けることが、最も大きな学びとなりました」

「参加前は曖昧だった事業案が具体化したことで、当初の形での実現が難しいことも分かりましたが、その過程で別の可能性を見出し、前向きに前進することができました」

7. 今後の展望:3期の経験を糧に、次なる挑戦へ

無事に幕を閉じたJICA BLUE Academy 3期ですが、受講生たちの挑戦はここからが本当のスタートです。彼らが国内外の社会課題に対して、蒔いたビジネスの種を実際の社会に実装していくためには、起業家自身の「熱量」や「プラン」だけでは足りないものがあります。

それは、彼らのプランを加速させる「仲間」や「協力者/サポーター」の存在です。

JICA BLUEでは、JICA BLUE Academyという「育成伴走の場」に留まらず、修了生たちを含めたOV起業家やOV起業志望者が社会を巻き込み、事業を加速させるための「共創の場」を今後も継続して創出していきます。

想いを、熱意を絶やさない
育み続けるOVコミュニティ