【イベントレポート】第 2 回 JICA 海外協力隊 帰国隊員社会還元表彰式に参加しました
2024.06.28|イベント レポート
2024年6月7日、JICA本部にて第2回JICA海外協力隊帰国隊員社会還元表彰式が開催されました。この表彰式は、JICA海外協力隊の経験を活かし、帰国後に社会課題の解決に取り組んでいる隊員たちを称えるものです。
今回、JICA BLUE事務局の起業相談員も表彰式へ参加させていただきました。
当記事では、イベントの様子をご紹介します。(式の様子は動画でもご覧ください。)
(写真:開式前の会場の様子)
JICA 海外協力隊 帰国隊員社会還元表彰とは?
『帰国隊員社会還元表彰』とは、帰国後10年以内のJICA 海外協力隊経験者で、国内外・公私問わず社会課題の解決に取り組んでいる方を表彰する制度です。2023年より開始され、今年は第2回目の開催でした。今回の式典では、受賞者6名の中から「大賞」が1名発表されます。
表彰式の様子
表彰式は、青年海外協力隊事務局長の橘秀治氏の挨拶でスタートしました。
その後、今回受賞した6名の帰国隊員がそれぞれの活動の取り組みを発表しました。
以下、発表順にご紹介します。
①アントレプレナーシップ賞
– 小柳 真裕氏(2014年度1次隊、カンボジア、青少年活動)
– 取り組み名称: 三輪アプローチでカンボジアの子どもたちへ充実した幼児教育を!
– 活動地: カンボジア
(写真:カンボジアからオンラインで発表した小柳氏)
最初の発表者はカンボジアから参加の小柳真裕氏。カンボジア派遣中に感じた幼稚園教育の課題を解決するため、現地教員向けのワークショップやデジタル教材の制作事業を行うTUKTUKを夫婦で立ち上げた背景や、現在の活動を語り、「一生持続可能なカンボジアの幼児教育を発展させるプラットフォームを」と今後の目標を発表しました。今後は教材開発だけではなく販売にも力を入れ、事業の収益化を目指すことを語りました。
②アントレプレナーシップ賞
– 栗野 泰成氏(2014年度2次隊、エチオピア、体育)
– 取り組み名称: 生活困窮家庭の子どもたちが対面・ネット上で集える場づくり
– 活動地: 東京都足立区
(写真:自身の原体験を語る栗野氏)
食料品の無料配達を通じて地域の困窮家庭を支援する一般社団法人チョイふる代表の栗野 泰成氏。事業をはじめるきっかけとなった原体験として、自身の生い立ちで感じた「選択格差」の課題を伝えました。情報が届きにくい家庭の例を挙げながら「情報の非対称性」の課題、支援対象の家庭毎の「電子カルテ」の作成、各家庭への個別伴走、自治体や支援団体との連携により広く「社会的処方」を広げていく必要性について、会場の皆さんに力強く語りました。
③地域活性化賞
– 浅野 拳史氏(2015年度1次隊、ルワンダ、理科教育)
– 取り組み名称: 廃校小学校を利活用した教育環境の向上及び地域活性化ビジネス
– 活動地: 静岡県牧之原市
(写真:事業紹介をする浅野氏)
廃校を新たな教育・まちづくりの拠点として活用する株式会社マキノハラボ 代表の浅野拳史氏は、地域住民を巻き込みながらの多面的な取り組みを発表しました。協力隊時代に感じた「何もできなかった無力さ」が原動力となった事業の経緯と、地域の人々の助けを借りながら行う巻き込み型のビジネスの誕生背景を語りました。「仲間と一緒に成長する”面”での取り組み」という言葉が、とても印象的でした。
④地域活性化賞
– 東 恵理子氏(2013年度3次隊、バングラデッシュ、コミュニティ開発)
– 取り組み名称: 乾杯が繋ぐ、地域とともに創っていく町づくり
– 活動地: 岐阜県瑞浪市
株式会社東美濃ビアワークス 代表の東氏は、地元岐阜の魅力を発信するクラフトビールの醸造を通じて、地域の関係人口拡大に貢献し、参加型体験コンテンツとしてのクラフトビールの取り組みを発表しました。「絶対に、田舎を諦めない」を信念に掲げ、ビールを通して地元産業と連携した体験づくりをしていることを語りました。「クラフトビールができたことで、地域にどんなインパクトがあったのか」という審査員の質問に対し「ビアガーデンを開いてくれる人が現れたり、当社が経営するバーに空き家相談に来る人も現れ地域の課題をシェアする場所にもなっている」と回答しました。
「好きなもので、好きな人たちとコミュニティをつくる」と、力強い生き方を語る姿が印象的でした。
⑤ボランティア活動を通じた社会還元実践賞
– 江川 裕基氏(2017年度2次隊、ブルキナファソ、環境教育)
– 取り組み名称: 海洋ごみMAPを活用した海洋ごみのデータ化と回収装置開発
– 活動地: 香川県小豆島町
地元漁師と共同で海洋ごみの回収に取り組むNPO法人クリーンオーシャンアンサンブル 代表の江川氏は、地域住民や行政との協力関係を築きながら、海洋ごみの回収及び回収したゴミのデータ化を行うことで、大学の研究分野にも寄与していることを発表しました。
「自分の地元ではない地域で、地元住民とどのように関係性を築いているのか」という質問に対し「その点は協力隊経験が大いに生かされています。クローズドの空間で、漁師さんと一緒にお酒を飲んだり、地元の消防団に参加したり、地元のキーパーソンを中心に地域の人間関係を築いていきました」と、協力隊経験が今の活動に生かされていることを語りました。
⑥多文化共生賞
– 香川 沙由理氏(2012年度3次隊、マラウイ、看護師)
– 取り組み名称: 多文化共生時代における成田赤十字病院の外国人患者・家族の支援活動
– 活動地: 千葉県成田市
看護師として協力隊へ現職参加した香川氏は、受賞者の中で唯一起業ではなく、職場復帰後の活動に対して、「多文化共生賞」を受賞しました。外国人患者の多い成田赤十字病院にて、外国人患者やその家族の支援、情報発信や異文化看護の講義を院内で実施する等、自身の取り組みを発表しました。質疑応答の時間では「現職参加により、同僚から長期で現場を離れることでの周りの抵抗や、復職での苦労はなかったのか」という質問に対し、「協力隊へ行ったことは職場での話のきっかけになりました。「アフリカから帰ってきた人がいる」という噂がきっかけで興味を持って話しかけてもらうことが増えたり、将来海外で働きたい看護師とのコミュニケーションが生まれたりした点はよかったです」と回答し、会場は和やかな空気に包まれました。
大賞の発表
6名のプレゼンテーション終了後、審査員4名による審議が行われました。その結果、大賞は栗野泰成氏が受賞しました。
(写真:大賞受賞の栗野氏とJICA理事長 田中明彦氏)
受賞スピーチで栗野氏は「協力隊での活動も、現在の活動も、最初は一人で始めました。周りの助けのお陰でできることが増えました。〜中略〜 このような賞をいただくことで自信がつきましたし、これからも社会課題に取り組んでいきたいです」と、支援者・関係者への感謝の気持ちと今後の事業へ懸ける意欲を語りました。
ネットワーキングの様子
表彰式後に行われたネットワーキングタイムでは、受賞者の東氏の手がける2種類のクラフトビールが提供されました。他にも多数、帰国隊員によるブースの出店がありました。
参加者は受賞者へのお祝いの言葉をかけたり、出店者へ商品背景を聞いたりと、活発な交流が見られました。
第2回JICA海外協力隊帰国隊員社会還元表彰式は、多くの感動と学びに満ちたイベントとなりました。受賞者の皆さん、おめでとうございます!
JICA BLUEでは、協力隊経験者の社会還元を「起業」の面から支援していきます。
起業相談やコワーキングスペースの活用を通して、少しずつ前へ進んでいきましょう。
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