BLUE起業伴走プログラム:3ヶ月間の挑戦と成長

2024.08.14イベント お知らせ レポート

JICA BLUE 起業伴走プログラムの変遷を振り返る

JICA海外協力隊起業支援プロジェクト「BLUE」では、3ヶ月で社会課題の本質に切り込むビジネスプランを完成させる「JICA海外協力隊 起業伴走プログラム」を一つの柱としています。

BLUEの受託先であるボーダレス・ジャパンのメソッドを最大限に活かし、JICA海外協力隊向けにアレンジした本プログラムがスタートしたのは、2024年4月21日。

選考を通過した1期生24組が、JICA海外協力隊の帰国後に社会課題解決を目指したビジネスを立ち上げるプランを策定しました。

本記事では、3ヶ月間にわたるプログラムの変遷を振り返り、その成果を報告します。

1期生24組の参加動機

今回書類選考と面接を経て24組のJICA海外協力隊経験者(以下、OV)がプログラムへ参加しました。参加者は各々異なる社会課題解決へ挑んでおり、参加に至った理由もさまざまです。自分の人生を懸けて社会課題解決に取り組みたい情熱を抱え、プログラムがスタートしました。

参考:プログラム参加の理由

・今取り組んでいる社会課題の解決に、自分の全ての人生を使いたいから

・一方的な施しは現地の人々の「支援慣れ」に近い状況を生み出してしまう。現地の人が本来持っているポテンシャルをどのように活かすかという点でもこの課題にビジネスという持続可能な形で取り組みたいと思ったから

4月21日:1day集中講座

プログラムのスタートは1Day集中講座でした。この講座では、ソーシャルビジネスの基本を学び、社会課題解決に向けたビジネスアプローチについての理解を深めました。

講座の内容は、自分が解決に挑む社会課題の解像度を高める「ソーシャルコンセプト」とそれをビジネスとして実装していく「ビジネスコンセプト」の考え方を学ぶものです。7時間にもわたる濃密な内容に、メインプログラムへの期待感が膨らみました。

4月25日〜:メインプログラム開始

1Dayの集中講座を経て、いよいよメインプログラムがスタートします。

今回のプログラムでは、一人ひとりにメンター制度を導入しました。1期生は、毎週の講義と合わせて、隔週でメンターのフィードバック会に参加しました。

講義では社会課題の深掘り方について学ぶだけでなく、「なぜその社会課題解決に挑むのか」「その課題の本当の原因は何なのか」を問います。この時間が、社会課題だけではなく自分自身にも向き合う時間にもなりました。メンターのフィードバック会では、経験豊富なメンターから直接アドバイスを受け、自身のビジネスコンセプトをブラッシュアップする機会を提供しました。

ソーシャルコンセプトシートの作成

ソーシャルビジネスを形づくる上で大切なことは、「ソーシャルコンセプト」を作成することです。1期生も、自分が取り組む社会課題に対する理解を深め「なぜ自分がやるのか」「本当にこの課題に取り組むのか」「誰の何の課題を解決したいのか」「課題の本質は何なのか」といった問いに向き合い続けながら、シートを完成させていきました。

グループメンバーとの壁打ち会

1期生たちは3組ずつグループに分かれ、毎週壁打ち会を行いました。ここでは、1期生同士で各自のアイデアやプランについてディスカッションし、相互にフィードバックすることを目的にしています。仲間の意見を聞くことで、新たな視点を得ることができたり、自分のプランを再検討する機会が増えたりするため、同期の絆が深まるきっかけにもなります。

6月1日:中間合宿

6月の初めにはJICA竹橋にて中間合宿を行いました。初めて対面で会う1期生の皆さん。普段オンラインでコミュニケーションをとっている同期とのリアルな繋がりは、とても貴重な機会となりました。

起業家講座ゲスト:株式会社NIJIN 代表取締役 星野達郎氏

中間合宿では、起業家講座を開催しました。ゲストは、JICA海外協力隊でグアテマラに派遣された後、株式会社NIJINを起業した星野達郎氏。起業家としての心構えや、JICA海外協力隊の経験を生かした起業、起業家としての生き方について、講演してもらいました。

その後、異なる社会課題に取り組む同期と直接交流することで、互いに刺激を受け合い、共に前進する決意を新たにしました。各自がプランを発表する時間も設け、仲間からの直接的なフィードバックを受けました。和やかな雰囲気の中にも、仲間のビジネスに貢献しようとするメンバーの熱意を感じるひとときでした。

ビジネスコンセプトの作成

中間合宿を終えた1期生は、前半に作成したソーシャルコンセプトの実現するための「ビジネスコンセプト」の作成に取り組みました。ここでは、多くの1期生が苦戦しました。ビジネスプランを具体化する際に、「これはビジネスとして成り立つのか」「未経験のビジネスで自分にできるのか」といった疑問や不安に直面するメンバーも多い期間でした。

メンターと同期の支え

スタート時から伴走しているメンターからは「本当にそれをやりたいのか」「方法論に引っ張られているのではないか」「あなたがつくりたい社会を、本当にこの手段で実現したいのか」など、プログラム前半で固めた「つくりたい未来像」である「ソーシャルコンセプト」に立ち返る厳しい問いかけがあり、プランを何度も見直す日々が続きました。プランを書き直しては仲間や運営メンバーと壁打ちをする中で、徐々に自分で納得できるプランを作成していきました。

(写真:メンターブラッシュ会の様子)

ある1期生は、ガーナ職業訓練校卒業生の進路選択肢を広げるプランを立てるため、起業伴走プログラムへ参加をしました。その実現手段として、現地でカレー屋を立ち上げるビジネスを考えていました。しかし、メンターから「本当にカレー屋をやりたいのですか、本当は彼らが持っているものを生かしたいのではないのか」との指摘を受けました。

そこから、訓練校の卒業生の強みが英語やICTであることを生かし、日本の地方へ彼らを派遣する事業プランへ変更しました。

その時点で、スタートピッチ(卒業発表)までの時間は残り2週間。事業プランが変わり、ヒアリングなどビジネスプランを完成させる上でのステップも振り出しに戻りましたが、仲間の多くが「ヒアリングに協力するよ」と彼女へ手を差し伸べ、ビジネスプランを完成させることができました。

同様に、事業の方向性が定まらずに焦りを感じていたメンバーもいました。メンターや同期に悩みや葛藤を打ち明けることで、助け合いや協力が生まれ、無事にスタートピッチを迎えた姿はとても印象的でした。

7月27日:卒業発表会「START PITCH」

プログラムの集大成として、7月27日に卒業発表会「START PITCH」をオンラインで開催しました。

120名以上のオーディエンスが見守る中、24組の1期生が魂を込めた発表を行いました。各自が取り組む社会課題に対する解決策を具体的に示し、今後のビジネス展開について熱意を持って語りました。

BLUE1期生が発表したビジネスプランのテーマは非常に多岐にわたっており、以下のような社会課題に取り組んでいます。

・ケニアの小規模農家の貧困削減

・マイノリティに対する差別・偏見及び不平等の解決

・モザンビークのインクルーシブ教育並びに障害者の就労支援

・途上国の救命率向上

・世界の貧困、戦争、難民の子どもたちの教育支援と心理ケア

・不登校の子どもたちとお母さんたちが抱える不安感や閉塞感の解放

・インドネシア人に対する日本語教育

・ウガンダを起点とした東アフリカにおけるクリエイティブ人材の育成とプラットフォームづくり

・子どもの権利の守護と社会参画

・出産の多様性と女性が納得する出産体験の実現

・ガーナの職業訓練校卒業生が置かれている状況改善

・アフリカにおけるモバイルヘルスケアと予防医療の推進

・ラオスの伝統織物継承者の不足および地方貧困と格差の解消

・ザンビアの小規模農家の低所得問題

・日本から帰国したベトナム人技能実習生に対する人材育成及び就職サポート

・日本の木工技術の保護

・マラウイにおける衛生的なトイレの不足と小規模農家の貧困問題

・ケニアの若者における努力が報われない社会の解消

・日本の地方における観光を入り口とした持続可能なまちづくりと人材育成

発表後の感想パートでは「本気で3か月間挑んで人生が変わった」「最高の仲間と出会えた」「人間やろうと思えばこんなに動けるんだという発見があった」と、プログラム参加を通した新たな発見や、仲間への感謝を言葉にするメンバーが多数いました。

一方で「プログラムを通して自分と向き合う中で、今まで目を背けてきた自分の弱さや醜さと向き合う必要があり、正直自信を失った時期があった。”この場に立たない方がいいのではないか”という気持ちさえあった。仲間や事務局の支えのお陰で、今日を迎えることができた」と、3ヶ月を通した苦悩を語るメンバーもいました。

プログラムに参加した3ヶ月間が1期生にとって、単なるビジネスプランの作成だけではなく、新たな自分との発見、受講前の自分の殻を破る機会となったことが伺え、メンターとオーディエンスからは激励の温かな拍手が送られました。

オーディエンスの皆さまも、長時間にわたる発表会に参加いただき応援や感想コメントは360件を超えました。同期隊員や交友のある隊員仲間が、発表者を温かく見守り、オンラインでも温かな空気を感じる4時間でした。

ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。

BLUE第1期生がこれからどのようなビジネスを展開していくのか、非常に楽しみです。プログラムに関わった全ての人々の努力と情熱が、今後の成功に繋がることでしょう。

第1期生の未来に向けて、引き続き応援していきます!

第1期生の発表が見どころ!8/20「BLUE最終発表会」

JICA海外協力隊員の帰国後の社会還元支援を目的とした JICA 海外協力隊 起業支援プロジェクト 「BLUE」は、第1期の活動が8月末に最終フェーズを迎えます。

最終報告会では、3ヶ月間の起業伴走プログラムを終えた第1期生のピッチを開催することが決定しました。

エントリーから今日に至るまで、どのような過程を経てビジネスプランを練り上げていったのか、今後の展望も踏まえて発表します。

オープニングイベントに引き続き、青年海外協力隊事務局長 橘秀治氏とボーダレス・ジャパン代表 田口一成氏も登壇!

JICA海外協力隊事業に”BLUE”の振り返りと今後の展望についてお話します。

イベント後には、発表したBLUE1期生、登壇者の橘氏、田口氏を含む参加者とのネットワーキング・交流会を予定しています。

今回は遠方の方へ向けてハイブリッド開催をさせていただきますので、ぜひ世界中からご参加いただき、BLUEのラストを盛り上げていきましょう!皆様のご参加をお待ちしています。

【スケジュール】

日 時:8 月 20 日(火)17:30-20:00 ※開場は17:00〜

場 所:スクランブルホール(東京都渋谷区渋谷2丁目 渋谷スクランブルスクエア 15F)

対 象:JICA海外協力隊経験者、JICA × ボーダレスの起業支援プロジェクトに関心のある方、JICA海外協力隊に関心のある方

<第一部> 17:30-18:05

・冒頭挨拶(JICA井倉義伸理事)

・JICA BLUE起業伴走プログラム1期生によるピッチ

<第二部> 18:10-20:00

・トークセッション「JICA BLUEの振り返りと今後の起業支援における展望」

  独立行政法人国際協力機構(JICA)青年海外協力隊事務局長 橘秀治氏

  ボーダレス・ジャパン代表取締役社長 田口一成

・交流会

▼お申し込みはコチラ

https://jicablue0820.peatix.com/

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