アフリカの貧困を撲滅し、アフリカ社会の「自信」に貢献する

2024.04.19 海外起業

貧困農家の作物を、 世界スタンダードの商品に加工する アルファジリ・リミテッド 代表 薬師川智子

青年海外協力隊の活動を通して、絶対貧困にあるアフリカの小規模農家がどのような課題を抱えているかを知り、貧困をなくすため現地での起業を決意。

「アフリカ社会に真の自信を」という信念のもと、ケニアを起点として大豆などの農産物の栽培指導や買い取りを行い、味噌や天然ナッツバターなど、健康で美味しい食品に加工して現地で販売している。経済の好循環を生み出し続けるアルファジリ・リミテッド代表の薬師川智子さんに話を聞いた。

小さい頃から貧しい人たち、
社会的に不公平な状態にある人たちに
何かできることはないか考えていた

「2013年、JICA海外協力隊3次隊でケニアに派遣され、現地で大豆の普及活動を行いました。そこで8割の小規模農家は絶対貧困にあると言われるアフリカ農村の現実を知り、貧困問題の解決という自分の使命を見つけました。小さい頃から母には『好き嫌いせず食べなさい』『世界には食べられない子もいるんだよ』と指導されてきました。では実際にそういう世界はどんなもので、自分には何ができるんだろうかということに非常に興味を持っていました。

海外協力隊として実際にケニアに行ってみると、人間は苦しい中でもなんとかしていく機能が備わっているんだと感じました。みんな自力で、それぞれが頑張ってすでに努力している。

ただ、より良い世界を作っていくためには協働していくことが必要なんだと認識できました。」

アフリカの貧困を撲滅するために起業

海外協力隊の任期は2年間。小規模農村の課題を知り、2年間で終わらせたくないからこそ、任期が終わったあとどのように自分の活動を繋げていけばいいのかを考え続けた。

「2年間の任期で終わらせたくないからこそ、何をすべきかということに強い葛藤を感じていました。自分が具体的に何をすべきかを決めて、計画し、行動に移していくまでのステージに一番の苦労があったと思います。

海外協力隊の場合、求められる成果や前提が決まっていません。幅広い形で自分の出すべき成果や貢献の方法を見つけてください、ということが求められます。だからこそ、自分の感じた使命に対して素直になれました。

自分ですべてを決めていかなきゃいけないし、ゴールを決めなければいけないので、決断をしていく上での葛藤や苦しみはありました。でも、アフリカの貧困問題を解決したいという情熱や使命感が勝ったおかげで形にしていくことができたんだと思います。」

さまざまなことを乗り越えた8年間

アルファジリ社の立ち上げ以来、実に多くの課題を乗り越えてきた薬師川さん。自分の活動への情熱と使命感を絶やすことはなかったが、心が折れそうになった経験は何度もあるという。

「売上を上げることはいくらでも頑張ればできると思いました。でも、利益を出すのが難しかったです。この国では、サービスや質の追求をしようとすると、スタッフにとっては常識以上の生産性、細やかさなどが求められ、相当な負荷がかかってしまいます。

一方、サービスや質は普通だけど需要の高いものをたくさん売ろうとすると、特に農産物のように個人商人の集まりでできている商流を、組織化することになります。組織化にかかるコストが大きく、相当スケールしないと利益は出ません。

これにすごく苦しんで、今は、ユニークな付加価値をつけることで、市場で勝負できるビジネスモデルにピボットしていっているけれど、打開策が見えない中で苦しんだ時期を過ごしすぎたかなと思いますね。

そして、農業ということに関わる難しさもありました。自然と戦っているので、計算上うまくいくと思っても、まるでうまくいかない。災害が起きてしまったり、現場の人の気持ちが変わってしまって、農作物を売ってくれなかったりしたこともありました。事業計画上うまくいくであろうロジックのほとんどが現場で崩壊するという苦しみをずっと味わっていたのが本当のところかなと思っています。

スタッフを大事にしているつもりだったけど、頼りにしていたスタッフが突然辞めてしまったこともありました。私が相手に対して耐えきれないような接し方をしていたことに気づき、自分の人間性を変えなければ人は付いてこないということも分かりました。

10代、20代の時に思い浮かべていた自分は自立して、もっと社会にインパクトを与えられるはずだと思っていたのに、現状とのギャップにも苦しんだ時期もありました。」

文化も環境もまったく異なる
海外での起業は『泥臭く』がキーワード

海外協力隊に参加して自分の置かれるべき花開く場所を見つけ、そこから10年、やっと軌道に乗ってきたと語る薬師川さん。自分の情熱を信じ、まずはスモールスタートを切って信頼できるスタッフたちと共に事業を広げてきた。その秘訣は『泥臭さ』だという。

「食品を加工するとなると、大きな工場が必要だと考えるじゃないですか。実は私も最初はそうだったんです。協力隊が終わったあとは工場を建てないといけないからお金がかかる。だから(食品)加工なんてできないとオプションから外してしまっていました。

でも、小規模事業者さんにも小さいけれどいいものを作ってらっしゃる方はいっぱいいて、そこから学ぶこともできました。泥臭くネットワークを作り、泥臭くみんなと探してやってきたんです。」

起業に至るまでには自らいろいろな人たちに会いに行きアドバイスを求め、ネットワークを広げる努力をしてきた。

海外協力隊の活動中の2年間、その職務だけに集中するのではなく、農村など情報の少ない場所にいたとしても、しっかりとネットワークを広げアイデアを形にしていく努力が将来に繋がると語る。

貧困農家により多くの利益を還元するために

自社ブランド商品として、農家から買い取った作物を加工し健康・美味しい・高品質を軸とした加工品を展開している。貧困農家により多くの利益を還元していくためには自社ブランドの拡大が不可欠だと語る。岡本太郎やゴッホに憧れ、もともとは画家を志し美大の予備校に通ったこともあり、商品パッケージのデザインは薬師川さんが担当している。

「味噌が非常に人気を得てきています。東アフリカのローカルの方をターゲットに、味やパッケージなどもよりローカライズした形で訴求力のある商品にしていきます。味噌のように、消費者にとって新しい旨味を含んだ調味料などのマーケティングに力を入れ、味覚の醸成も通して、社会を豊かにしていきたいです。

スタッフはみんな素直で真面目。そんな人たちに出会うことは、そう簡単ではないので、この人たちに出会えて良かったです。

純粋に、コミュニティに還元したいという強い思いをみんなが持っていて。ここのスタッフのみんなはそれが原動力になっているのかなと思います。」

信頼関係を作るには自分の行動やメッセージが一貫していることが大切だと薬師川さんは語る。すべては貧困をなくすために、アルファジリ・リミテッドは活動を続けていく。

海外協力隊OVに
起業という選択を